東海道五拾三次を歩く第21回・・・藤枝〜袋井 2泊3日

 1999年12月22日、午後14時30分頃、東青梅駅で青春きっぷを購入し、東海道歩きに出発。今回は、藤枝宿から浜松宿を目指してどこまでいけるか。藤枝まで5時間ほどかかるので、今回の読書本は、祥伝社NON BOOKの広重東海道五拾三次の秘密対中如雲著を持
参する。この著は、広重の「東海道五拾三次」は30年前に描かれたという司馬江漢の「東海道五拾三次画帖」が元絵だったと喝破した著書である。著者は伊豆高原美術館館長であり、この美術館には、司馬江漢の「東海道五拾三次画帖」が展示されている。伊豆高原美術館には何度か足を運んで、この絵を見ているだけに身近に、しかも東海道五拾三次を歩く旅に相応しい本だと思う。
 東京、熱海と乗り換え、19時48分藤枝駅到着。南口の藤枝サザンホテルが今夜の宿だが、夕食をどうするか。表口の方が飲食店が多いかなと、表口に下りてみる。中華料理店、居酒屋が2~3軒、こんなものかと南口にも行って見ると更に店が無い。仕方なく再び表口に戻り、駅を出てすぐ右手の中華料理・丸金飯店に入る。お客は1人居たが、活気の無い店だ。メニューを見ると、各種ラーメンと餃子しかない。まずは餃子を注文すると、おばさんは「悪いねー。手を怪我して餃子を作れないので餃子は無いんです。」仕方なく、ねぎラーメンに紹興酒を注文する。酒のつまみに乾き物が出る。
 やれやれと、南口に再び戻りホテルへ向う。ホテル手前右手にしゃれた店構えのとんかつ屋があった。「なーんだ。まっすぐここにくれば良かったのに。」サザンホテルでチェックイン手続きを済ませ、部屋に入り、翌日に備えて早く休む。
 2000年12月23日、藤枝サザンホテルを午前6時40分にでる。表口のバス停から6時58分発のに乗車。7時10分、「白子」本町2丁目で降り、旧道に合流する。朝食にすぐそばの手づくりパン屋さんで、ピザ風のオニオンサラダパンと熱いお茶を買い、歩きながら食事をとる。
 藤枝三丁目辺り、上伝馬商店街に入ると各店の屋号は、江戸風の吊り看板に統一している。
街道沿いの商店街のいなせな意気込みを感じさせる。7時34分、正定寺には、享保15年(1730年)田中城主土岐頼念が植えたとされる「本願の松」を見る。幹廻り6.3m、枝張り東西11.5m、南北14mもの大木だ。まるでこんもりと茂った森のようだ。志太2丁目に「弥二喜多」と書かれた看板が。なんと、韓国料理焼肉店だ。この辺りから、所々松の大木が見られる。国道1号線を横断してから、国道の南にほぼ平行して、単調な歩き。8時13分、六地蔵尊に出会う。瀬戸新屋町商店会の案内板によると、鏡ケ池から出現し、この地に祀られた。開扉供養は33年毎に、縁日は8月23〜25日に行われる。一里塚あたりからもよおしてきて、トイレが無いかと眼を凝らしていたが、公園は無いし、コンビニはないし、何とかしてくれー。製茶工場があるのだろうか、製茶のときの香りがプーンと来る。国道と合流したところに、セブンイレブンあったのでトイレを借りる。助かった!島田宿の一里塚に気がつかずに通過、島田駅左折の表示の後、家具屋さんの若旦那に喫茶店を教えてもらう。
 喫茶店「有」は、大井神社の隣だった。いつも氾濫して恐れられた大井川は、神として祀られ、大井神社は交通、安産の守護神として知られる。喫茶店有のママさんは、静岡弁丸出し。今日は競馬の天皇賞の話題で持ちきり。「松井さん、ミルクはいらんずらー。」とか。静岡新聞を読ませてもらい、コーヒーをいただく。10時25分にでる。大井神社では丁度、神前結婚式の最中で、角隠しの花嫁さんの撮影に招待客のカメラマンが群がっている。私も撮らせてもらう。
 大井川の渡しで使ったときの鐘があるという大善寺は、すぐそば。山門が相当古いなーと、社務所を訪ねると、住職が説明してくれた。山門の脇にある妙言塔に、元禄13年の銘が印される。本殿の釘隠しに葵のご紋が入っているのは、徳川家との繋がりがあること。厨子のご本尊の脇に徳川4代の位牌が祀られるなど、尋常な関係ではあるまい。この地方の民話「灯篭の松」の起源となった灯篭の松の根が保存されている。ご本尊の左側には、紀伊国屋文左衛門が寄贈したと言う1m弱の木造地藏尊が安置される。いろんな寺宝をご説明していただき、寺をで
る時、時の鐘を撮影していた若夫婦と出会った。私が頼りにしている講談社の「ガイド東海道を歩く」を彼も持参していた。
 1.3kmも行くと、島田宿大井川川越遺跡にでる。川越に従事した人々の家屋や川越に使用した用具などを展示した博物館となっている。江戸時代そのままの姿を旅人に見せている。そこで、先の若夫婦とまた出会い、声をかける。沼津在住の方で、これまで三島から歩いていると言う。蓮台などを見ていると、家屋の外にいた地元のおじさんが、説明を買ってくれる。口調が訛っているのか、聞き取りにくいがとてもありがたい。知らぬ間に、二人と別れ、私はすぐ先の島田市博物館を見学する。川越の資料、特に川越の方法や値段に興味を持った。幕末の島田宿の人口は6,000人、川越人足は650人いたと言うから川越の重要性が理解できる。
 11時52分に博物館を出て、迂回して大井川を渡る。橋上からの眺めはすばらしい。
とても長い橋で、急ぎ足で歩いて13分かかった。昔は東海道一の大河で、川幅が1.3キロもあったという。渡り切ると金谷町に入る。大井川鉄道新金谷駅近くの踏切を渡り、JR金谷駅方面へ向う。金谷は千頭方面へ行くSL列車の始発駅で知られ、新金谷駅は大型バスの駐車場の関係で、乗車駅で知られた所。佐塚屋本陣跡(書店)、松屋本陣跡(地域交流センター)を通過するともう、12時34分。金谷駅ガードで、この先に食事場所があるかを、通りすがりのおばあさんに聞くと、「この先は無いから、富士見食堂がいいだろ。」と教えてもらう。
 店内にはSL列車の写真が貼られて、メニューの張り紙に「SL機関車のようなスタミナつける焼肉定食700円」のフレーズに釣られて注文。大判の焼肉3枚にキャベツ、焼肉のたれの味がいい。缶ビールも1本飲んでしまった。13時10分出発。
 金谷坂から石畳になる。すぐ観光用の石畳茶屋があったが近すぎるので通過。昔の石畳は30mを残して舗装されていたが、平成3年に金谷の住民600人の手で7万1000個の山石を使用して430mの石畳が復元された。急な坂道で熱くなる。下っていくと今度は菊川坂の石畳、ここは平成12年の調査で江戸後期に敷設された石畳と分かった所で、丸石が金具で打ち付けら
れた傷跡が目だつ。菊川からの小夜の中山に向う1キロもの上りがとてもきつい。だが、坂上からの茶畑の景観はすばらしい。古刹久遠寺を過ぎたところで、沼津の若夫婦と合流、ここでお互いの名前を名乗ることになる。木元伸吉さんとおっしゃる。15時15分日坂宿に到着し、日坂宿本陣跡入口の看板のところで、互いの記念写真を取り、互いのメールアドレスを交換して分かれる。彼らはここでバスを待ち、沼津に帰る。
 私は掛川まで行きたいので、この先二軒残る旅籠屋のひとつ川坂屋を足早に見学し、ギアチェンジ。単調な街道を急ぎ、掛川の薗ケ谷あたりで16時半ころ、もう薄暗くなり太陽はオレンジ色にまばゆく輝き、遠くの山は薄紫色で美しい。5分もすると夕日は家屋の屋根に沈んでしまう。逆川にかかる馬喰橋を渡った所に葛川一里塚跡、脇の常夜灯に灯がともる。東伝寺を目印に掛川宿の枡形に暗がりを歩く。途中歩きながらに予約した今夜の宿、梅木屋に向うが、食事がつかないので夕食場所を物色しながらの歩きだ。
 17時半、割烹赤船で夕食をとる。男山をまず一杯、刺身・天ぷら・里芋にホタテの煮物の赤船定食、カレイの塩焼き、小海老の入った、にらまんじゅうをご馳走になった。足もがくがくで、梅木屋に着き、女将さんに案内して貰う。三階の胡蝶の間に案内されるが、鍵を置いていかないので、聞くと「大丈夫。うーん、常連の客が2組だけだから多分大丈夫。」といいながら、鍵を渡してくれた。
 翌日12月24日6時20分、暗がりの中、ホテルを出発。風が強く、帽子が飛ばされる。中町商店街の清水銀行あたりから、掛川城がよく見える。清水銀行は平成8年6月新築で、掛川市が推進する「城下町風町並みづくり」にマッチした瓦葺の和風作り。屋根には両替商の吊り看板。外壁には山内一豊と千代夫人のレリーフ像が設置される。内部にもいろんな工夫がされ、観光客も訪れると言う。
 7時過ぎにようやく日がさし、明るくなってきた。大池橋で左折し天竜浜名湖鉄道の踏み切りを横断する。善光橋あたりから所どころ、松並木が残る。
いつものことだが、旧道での食事には、苦労する。法多山入口の看板を過ぎて、15分歩いてようやくヤマザキデイリーで野菜たっぷりのサンドイッチをゲット、先のJA前で食べる。出るとすぐ、油山寺の道標、8時45分バイパス道に合流するが、すぐ左折して1キロ弱で宿場公園。宿場公園で、逆光なのでどう写真を撮るかと戸惑っていると、おじいさんが寄ってきて、「東海道を歩いているのかね。どこまで行くのか。私は東海道は二回歩いたよ。」と話し掛けてくる。
 信号を左折して、800mで袋井駅に突き当たる。袋井と言えば、厄除けで有名な法多山尊永寺、日本唯一の火防霊場の万松山可睡斎、眼病に効く、掛川城の大手門が山門として移築されている医王山油山寺、以上の三山が遠州三山として知られる。観光バスで来るのとは、地理的・視覚的な感覚がつかめず、距離感がよくわからない。
 とにかく、2泊3日で藤枝から袋井まで45キロぐらいは歩いただろうか。天候には大変恵まれたので、とても気持ちよく歩くことが出来た。感謝感謝である。

  




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