中山道69次を歩く・日本橋〜浦和 2001年9月1日 第1回


東京駅八重洲口から日本橋に向かう所を、根っからの地理音痴から丸の内側に降り、30分も迷いながらの基点日本橋着だった。天候は曇り、午前8時10分北側西詰めに道路元標のある日本橋を発つ。左手に三越が見える。江戸時代、このの辺り、伊勢、近江、京都に本店を置く、上方商人の江戸店が軒を連ねていた。横山吉男氏の「街道シリーズ」で、もし「現金掛け値なし」がデパートの条件なら、世界で一番早いデパートは呉服店「越後屋」(のちの三越)だという。従来デパートの第1号は1853年(嘉永5年)創業のパリの「ボン・マルシェ」だといわれるが、三越は1684年(天和3年)が168年も早い。JRの神田駅でトイレに行こうとトイレマークに惹かれていくと、ガード下に居を構えるおじさんがしゃがんで新聞紙でお尻を拭いている光景に出会う。須田町交差点を過ぎ、昌平橋を渡り外堀通りを左折すると湯島聖堂が左手に。聖堂は林羅山が上野に開いた私塾で、今の建物は昭和10年の復興によるもの。ここからは聖堂は見えない。案内板には「五代将軍綱吉公建立の孔子廟」とある。

本郷3丁目、右手に「内藤一水社」の看板が見える。若くして亡くなった甥っ子が勤務していた会社だ。東大の赤門着が9時。

国の重要文化財で、文政10年(1827年)に十一代将軍家斉の娘溶(やす)(ひめ)前田家に嫁いだときに建てた朱塗りの門。巣鴨に入り、右奥に六義園の森をちらちら見ながら進む。5代将軍綱吉の側用人柳沢吉保が自ら設計・監督し、7年の歳月をかけた広大な庭園。都内の名園を巡るコースで来たことがある。9時42分、JR巣鴨駅でお腹が空き焼肉丼の松屋で昼食をとる。価格破壊の話題の焼肉丼、並み丼290円という安さ。直ぐ近くの床屋の看板で「980円」に驚く。

早速二階の理容店で散髪をして貰う。洗髪、髭剃りも追加してもらい合計1,500円。ぴったり時間は30分。お客はひっきりなしに来て、2階が一杯になると3階に案内される。

巣鴨駅からはとても賑やかになる。巣鴨地蔵通り商店街に入ると、どこから人が湧き出してきたかと思うほどの混みあいだ。左手に江戸の街道を守護した「江戸の六地蔵」の一つ真性寺(しんしょうじ)の地蔵がある。旧東海道にはその内の一つが品川の品川寺だった。直ぐ先の右手に「とげぬき地蔵」の高岩寺がある。境内は線香の香りに満ち満ちて、いかにも霊験あらたかな気持ちになるから不思議。左手のお地蔵様に杓子で水ををかける人々で列をなしている。庚申塚の辺りの電柱に「担ぎ手募集!」の看板が。何かと見ると9月16日の祭りの大神輿の担ぎ手が不足らしい。どこも若手がいないのか。



江戸から最初の宿場板橋宿の板橋に11時38分着。宿場の名残は何も無くどうもさびしい。商店の前にマスコット兎なのか、いろんな姿態で描かれた板橋宿の名が入った看板が置かれる。お相撲さんの大きな看板がある力士料理の「くらち」が目に付く。日本橋から3番目の志村一里塚が、昔のまま残っている。街道の巾9mの両側に約5間(約9m四方)高さ1丈(約3m)の定めにより作られた。今や、都内に残るのはここと北区西ヶ原の2ヶ所のみとか。

戸田橋を渡る。江戸から16キロの表示板があった。河川敷は野球、サッカーなどのグランドの芝生でとてもきれいだ。もう腰が痛む。13時15分、お腹が空き、喉も乾いたので「冬馬(てーめん)」で餃子に生ビールをいただく。

蕨宿に入り、厚生堂薬局が昔の本陣後、先の左手が「蕨市指定文化財蕨本陣跡」が第14代岡田真雄氏宅。蕨市立歴史民族資料館に入る。弘化元年(1844年)、大名の食事を再現している。生いかやあわび、川魚の塩焼きが入る、なかなかの美食。

新道との合流地点に、「中山道ふれあい広場」

がある。白壁に街道行列の絵が描かれ、火の見やに摸した時計が設置される。歩道の所々に中山道の宿場を描いたタイル絵が置かれる。トイレがないな〜と思いきや、その裏は駐在所だった。しばらく行くと、右手にこんもりとした森が、平安時代の調(つき)神社。入口両脇に狛犬の代わりにが鎮座する。調は「租庸調」の貢物のことで、武蔵国の調はここに集められ、朝廷に届けられた。その後、月神信仰と結びつき、兎のお出ましとなった。兎の像は1861年作の銘があった。

浦和岸町コミニティセンターで「広島市民が描いた原爆絵画展」が開かれていた。1974年、被爆者の一人小林岩吉さんが、1枚の絵をNHK広島支局に届けたことから、被爆の体験を残そうと言う運動が、広島市民のあいだから起こった。現在、そうして描かれた2,225枚の絵が保管されてきた。その一部を借りて展示しているものだ。赤く燃えさかる火を逃れて川に身を投げ、大勢の流される姿。原爆に身を焼かれて、皮膚がべろんべろんと垂れ下がる無残な姿など。とても痛ましい。

もう20キロを歩いただろうか。しばらくぶりなので、足腰はもう限界、この辺りが江戸から3番目の宿浦和宿の中心地。おいしいコーヒーでもと静かな喫茶店を探すがどこも一杯で諦め、右折して浦和駅へ向かう。16時20分、浦和駅着。

 

 

中山道を歩く もくじ

Copyright (C) 2000 A Spa Service All Rights Reserved

inserted by FC2 system